ソフトウェアテストにおいては、テストケースをはじめとして管理が必要な情報の量は少なくありません。これらの情報を適切に管理しないと、テストの進捗情報を正確に把握できなくなったり、情報の確認ミスで工数を浪費したりしてしまいます。
テスト管理ツールは、これらソフトウェアテストに必要な情報を適切に管理するのに役立つツールです。この記事では、テスト管理ツールを利用するメリットや注意点、選び方についてわかりやすく解説します。その上で、よく使われるテスト管理ツールの種類についてもご紹介いたしますので、参考にしていただければ幸いです。
テスト管理ツールとは
テスト管理ツールとは、テストの進捗状況をはじめソフトウェアテストに関わる情報を一元的に管理するツールのことを指します。テスト管理ツールが基本的に備える機能として、以下が挙げられます。
・テストケースの登録・管理
・テスト結果の登録
・テストの進捗状況管理 など
テスト管理ツールによっては、テストケースの集計・分析やテストケースの実行など、テストの進行に役立つ様々な機能を搭載しています。
昨今ではソフトウェアの開発規模が拡大しており、テストケースが数万から数十万に及ぶことも少なくありません。ソフトウェアテストの規模が大きくなれば、管理すべきその他の情報も膨大な量に及びます。
ソフトウェアテストの規模が小さいうちは、テスト管理のニーズは大きくないかもしれません。ですが、その規模が大きくなることで、テスト管理ツールの必要性も格段に増します。
テスト管理ツールを使うメリット
従来通りExcelなどでソフトウェアテストに関わる情報を集約する場合、シート数が膨大になり管理が煩雑になる可能性があります。その結果、必要な情報が複数のシートに分断されるなどして、進捗状況の把握やバージョン管理がしづらくなることも少なくありません。それにより効率的にテストを進められなくなったり、大きなミスにつながったりする懸念があります。
テスト管理ツールを使うことで、テストの進捗をはじめ様々な情報をシンプルに一元管理できるようになります。その結果、テスト管理に関わる作業が効率化され、テストの負荷も軽減されるというメリットがあります。
テスト管理ツールを使う際の注意点
テスト管理ツールは無償のものもありますが、有償のツールを使う場合は導入費用やランニングコストが発生します。そのため費用対効果を考えて、導入するかどうか、どのツールを選ぶかの検討が必要です。
またテスト管理ツールには、それぞれ制約があります。Excelなどを使った従来の管理方法から、運用を変更する必要が生じる場合がある点も注意が必要です。
テスト管理ツールの選び方
テスト管理ツールに限ったことではありませんが、ツール導入は目的でなくテストをスムーズに進めるための手段です。テスト管理ツールを導入する際は、プロジェクトの課題が解決できる種類を選ぶことが大切です。まずは、現在のプロジェクトにおいて、テスト管理にどんな課題があるかを明確にし、どのような目的で導入するかを考え、整理する必要があります。
また一口にテスト管理ツールといっても、機能性やコスト、UIの使いやすさには違いがあります。その中から、自社のニーズと予算にあった種類を選ぶことが必要です。
よく使われているテスト管理ツールの例
非常に多くの種類のテスト管理ツールが、市場で提供されています。はじめてテスト管理ツールを導入する場合、その中から適切な種類を選ぶのは簡単ではありません。
ここでは、数あるテスト管理ツールの中でも、特によく使われている種類をピックアップしてご紹介します。
QualityForward
「QualityForward」は、ソフトウェアの品質保証とテストを専門とする株式会社ベリサーブが開発・提供するクラウド型のテスト管理ツールです。スプレッドシート形式の管理画面で、Excelでテスト管理をしていたユーザーもスムーズに使い始められるでしょう。
また豊富な形式のレポートを、リアルタイムで自動作成する機能も用意されており、レポート作成の手間を軽減できます。さらに、ソフトの更新や修正に合わせ繰り返しテストが行われることを想定し、テストケースの再利用、再テストの実行などが簡単におこなえます。
「Redmine」「JIRA」などの課題管理ツール、一部自動テストツールとの連携が可能です。
https://www.veriserve.co.jp/qualityforward/
TestRail
「TestRail」は、数あるテスト管理ツールの中でも人気の高いWebベースのテスト管理ツールです。アプリのインストールなどの必要はなく、Webブラウザにて操作できます。
「TestRail」ではテストケースに必要なデータを添付するなどして、テストに関わる情報を一元的に管理することが可能です。優先度などによって目的のテストケースを簡単に検索できるため、スピーディーにテストを実行できます。
テスト全体のサマリーやテスト結果の比較など、いろいろなレポート用テンプレートが用意されているのも大きな特徴です。レポートを、あらかじめ決められたスケジュールで自動作成・自動送付する機能もあり、テストのレビューや状況把握がしやすくなります。「JIRA」や「Redmine」などの課題管理ツールとの連携も可能です。
https://www.techmatrix.co.jp/product/testrail/
TestLink
「TestLink」は、オープンソースで開発・提供されているWebベースのテスト管理システムです。無料で使えるツールで、テストケースの管理や進捗状況の管理などテスト管理で必要となる基本的な機能は一通り揃っています。
さらに、テスト仕様書を記述し、データベースへ保存することが可能です。作成したテスト仕様書を版管理し、あとから版ごとの変更点をチェックする機能もあります。こちらも「Redmine」などの課題管理ツールとの連携が可能です。
CAT
「CAT」は、ソフトウェアの品質保証・テストを手掛ける株式会社SHIFTが開発・提供するテスト管理ツールです。Excelに似た管理画面なので、これまでExcelでテスト管理を行っていたユーザーは扱いやすいでしょう。テストケースをまとめた手元のExcelファイルをインポートして利用する機能も備えています。
テストケースと障害情報を紐づけたり、テスト課題をリアルタイムで分析したりすることも可能です。データのインポート・エクスポートといった操作性が高い点も、「CAT」の大きな特徴と言えます。課題管理ツール「JIRA」や「Redmine」との、シームレスな連携も可能です。
Qase
「Qase」はテスト計画・テストケースの作成から自動テストの実行、テストレポート作成・共有まで行えるSaaS型のテスト管理ツールです。複数のプランがありますが、ユーザーが3人までであれば無料プランも利用できます。
「Qase」ではビジュアル的に優れた管理画面を使い、テストスイートと呼ばれる単位にて階層的にテストケースを分類・管理可能です。テストケースはドラッグ&ドロップの操作などで、柔軟に管理する機能もあります。「GitHub」や「JIRA」をはじめ様々なツールと連携できる点も大きなメリットです。
qTest
「qTest」はアジャイルテスト管理と、品質保証プロセスの効率化が可能なテスト管理ツールです。リリース計画からテスト実行、不具合管理までのトレーサビリティを提供し、案件管理を実現します。
アジャイル開発ツール「Jira Software」と統合することで、アジャイルにより開発されたソフトウェア品質の向上も可能です。ソフトウェアの品質をレポート化・可視化し、ソフトウェア品質保証のプロセスを支援する機能も備えています。
https://www.ricksoft.jp/lp/qtest_poc.html
PractiTest
「PractiTest」はテスト計画から実施までのプロセスを一元的に管理し、リアルタイムでテスト全体を確認できるSaaS型のテスト管理ツールです。カスタマイズ可能なフィルター機能やダッシュボード、レポート機能を搭載し、進捗状況の透明性を確保できます。
また世界中の様々な機関から認証を受けた、安全なプラットフォームでデータを管理できる点も大きな特徴です。テスト項目を修正したり再利用したりする機能もあり、テストプロセスの効率化も可能です。
https://www.proveq.jp/verification/management/practitest/
【参考】課題管理ツールとテスト管理ツールの関係/連携
テスト管理ツールは、「JIRA」・「Redmine」・「Backlog」といった有名な課題管理ツールと連携する機能をもつ種類が多いです。ソフトウェアテストで見つかったバグを課題管理ツールに記録するなど、テスト管理と課題管理は連携が必要になるケースは少なくありません。課題管理ツールとテスト管理ツールを連携させることで、バグの情報を個別に登録する必要がなくなるなど作業を効率化できます。
反対に課題管理ツールによっては、プラグインを追加することでテスト管理の機能を搭載できる種類もあります。この場合、既に利用している課題管理ツールで、テスト管理を行うことも可能です。
まとめ
テスト管理ツールとは、テストケースやテストの進捗など、ソフトウェアテストを行うのに必要な情報を一元的に管理するツールです。従来、これらの情報はExcelなどを使って管理されていましたが、情報が膨大になるにつれ管理が煩雑化し、効率性も失われていました。
テスト管理ツールを使うことによって、これら膨大な情報の管理をシンプル化し、作業を効率化することが可能です。その一方でテスト管理ツールにはそれぞれ制約があることから、利用にあたり従来の運用を変更する必要が生じる場合もあります。また有償のテスト管理ツールを導入する場合、自社の利用においてコストが見合うかの検討も必要です。
テスト管理ツールによって機能性などが大きく異なるため、テスト管理ツールを導入する際は自社のニーズや予算にあった種類を選びましょう。またテスト管理ツールに限りませんが、ツール導入自体は目的ではなくソフトウェアテストを効率化する手段です。自社プロジェクトの課題が解決できる種類を選ぶ必要があります。

AIQVE ONE株式会社 人材開発部
2008年新卒でベリサーブに入社。テスト一筋15年。入社以来社内の研究活動を実施。ブルーレイプレイヤ、カーナビ、カラオケ機器などの組込みのテストで経験を積み、自動車の車載ECUのシステムテストや、航空機の安全評価など経て、直近は社内でMBT及びアジャイルにおけるテストプラクティスの研究を行っている。自社プロダクト開発のプロダクトオーナーも経験。2023年5月よりAIQVE ONEにも所属し、教育も行う。幅広い分野のテストのプロフェッショナル。
資格取得はISTQB-AL-TM/IVEC-Lv4/基本情報技術者