最終更新日: 2023年5月18日

当ブログを運営するAIQVE ONEは、テクバン株式会社、株式会社ミクシィ(現在:株式会社MIXI)と共催し、「【テクバン×ミクシィ×AIQVE ONE】3社共催!テスト自動化事例LT会」を2022年6月28日に開催いたしました。
本セミナーは、テクバン株式会社 品質ソリューション事業部が定期的に開催している、「ソフトウェアテスト」「テスト自動化」「アジャイル」「プロセス改善」など、 「QA/品質保証」に関する様々なキーワードをテーマにしたイベントです。
今回のテーマは「テスト自動化事例のLT会」とし、実際に現場でテスト自動化に取り組まれている方々にご登壇いただきました。
この記事では、株式会社ミクシィ 安里 大志氏による「テスト自動化の魅力に気づくまで」と題した講演内容をお届けいたします。

「テスト自動化の魅力に気づくまで」

皆さん、こんにちは。株式会社ミクシィの安里と申します。
本日は「テスト自動化の魅力に気づくまで」というテーマで、どういう経緯で我々がテスト自動化のスタートラインに立ったのかというところを中心に、お話しさせていただきます。

テスト自動化をそろそろやらなければという気持ちがある方の参考になれば良いかなと思っております。

自己紹介

簡単に、私の自己紹介をさせてください。

2015年に11月にミクシィに入社し、モンスターストライクのQAを担当しておりました。その後は、モンストから離れていて、開発本部CTO室QAグループでマネージャーをやっております。

会社紹介:ミクシィについて

続いて、ミクシィ社についてもご紹介させてください。

ミクシィのこれまでのサービスのリリース年表になります。創業は20年を過ぎていまして、長きに渡り多くのサービスをリリースしております。中でも、SNS「mixi」や「モンスターストライク」が有名ですが、このスライドをご覧になって、「このサービスってミクシィが運営していたのか」という発見もあるかもしれません。

このようにコミュニケーションを軸とした、様々なサービスを展開しております。

開発本部CTO室 QAグループが担当しているサービス

続いて、私の所属している部署についても簡単に紹介させてください。

現在は複数のサービスのQAを担当しております。
サービスの種類も多種多様ですし、QAのやり方もプロジェクトによって異なっております。QAを1人でやっているものもあれば、5名でやっているものもありますし、アジャイル開発をしているものもあればそうでないものもあります。QAメンバーに関しては、10年以上の経験者も複数いれば、1年未満の方も複数いるという混成チームでやっております。

テスト自動化のきっかけ

ここからが自動化の話になります。
2021年1月に当時の上長であるCTOの村瀨から「自動化やらないの?」って聞かれたんですね。私は当時、あまり自動化に興味がなかったので、話を逸らした記憶があるのですが、「来期は予算確保するから、やってみてね」と言われたのを覚えています。そして、「予算を確保する」=「本気でやってほしい」ということかな、と解釈しました。

それまでは自動化に対してそこまで前のめりではなかったものの、「本気で取り組んだこともなかったな」と思いまして、本格的に取り組むことにしました。

当時の自動化への認識

そもそもなぜ自動化に前向きではなかったかというと、自動化について全く知らなかったわけではなくて、個人的にセミナーに出たり、書籍を読んだり、ネット記事などでインプットは行っていました。

また、周囲で個人プロジェクト的にSeleniumを利用して自動化をやっているQAメンバーもいたのですが、それを踏まえた上で、自動化を組織的にやるには、我々には少々難易度が高いという結論を下していました。

なぜテスト自動化は難しいのか

なぜ自動化が難しいのかというと、できる人が限られるのが大きな理由だと思います。また、支援ツールも、高額な割に機能が少なく、人を雇った方がいいと思ったりもしていました。また、2~3年前に専門でやっていた、ゲームQAと自動化の相性がよくなかったため、自動化=自分たちには向いてないという結論を当時は出していました。

自動化へのチャレンジ

ただ、私の情報は2~3年前までで止まっていたのも事実でした。なので、会社が調査導入費用を確保してくれたからには、自動化に本気で取り組もうと考えを改めました。

まずは徹底的にインプットしようと思い、目につくセミナー全てに参加したり、テストベンダーさんからお話を聞いたり、ネット記事を読み漁ったりしました。そうしたら、自動化の潮流が変わっていることに気づいたんです。

一昔前はオープンソースによる自動化の話が多かったのですが、最近は自動化支援ツールを使った自動化の話が増えているのがすごく印象的でした。
その中でよく目にしたのが、MagicPod、mabl、Autifyで、「これだけ使いやすいツールであれば、誰でも使いこなせて、自動化のハードルが下がるのでは?」と徐々に思い始めました。

誰もが使える=誰もが自動テストを書く時代が来ていると期待を感じていた時に、JaSST21で、Autifyさんとチームスピリットさんによる、Autifyを用いた活用事例に関する登壇があったんです。そこでは、まさに私がこういう風になったらいいなと想像していたような、全員が自動テストを書くような取り組みの話をされていました。理想の形で自動化に取り組まれている会社さんがあったので僕たちにも自動化ができるのではないかと、少し自信を持つことができました。

ツール探し

ツールは4~5つお話を聞いて、最終的にはMagicPodに決めました。
決め手は以下の通りです。

・使いやすい
・クラウドだけでなく、ローカルで動かせる
・ブラウザ、アプリ、両方に対応している
・サポートの返信が早い
・月契約が可能

Autifyやmablにも備えている機能・特徴もいくつかあるのですが、MagicPodは、使い始めるハードルが低かったことが決め手の一つです。

一つはローカルで動かせるという点です。クラウドですと、検証環境、アクセスする際の認証なども結構厳しく、そもそもアクセスできないこともたまにあり、入り口のところで躓きがちでした。当然、自動化にあたりローカルよりクラウドの方がより良いやり方だと分かってはいるのですが、動かないことには先に進まないので、ひとまずローカルで動かせるMagicPodにしました。

そして、実はもう1つのほうが大きい理由なのですが、MagicPodは月契約が可能だったんです。我々は「自動化を本気でやるぞ」というよりは、「やれるかどうかわからないから、ちょっと試してみよう」くらいの温度感だったので、いきなり数百万ものツール費用を出すことに少しためらいがありました。
その点、MagicPodは月契約だったので、5万円からの小さい金額で始められて、ありがたかったのです。

これが2021年8月ぐらいの話です。

MagicPod契約後

MagicPodを契約後は、チームのスタッフに挨拶代わりに日々MagicPodの使用状況を聞いて、使っている前提で話を進めていました。

そうしたら2~3名が興味を持ち使ってくれたのですが、すごくいい取り組みだったなと思うのが、毎週決まった時間に予定を入れて、MagicPodを半強制的に触ってもらう時間をつくったことです。

もし仮に分からないところがあったら随時確認するようにして、とりあえずMagicPodを触ってみて、テストケースを作ってみたり、共通のテストケース1つをメンテナンスして、モブワークみたいにやってみたりするという取り組みをスタッフが自発的に始めてくれて、これはとても良かったなと思います。
こういうツールは、「時間が空いたらやってみます」と言いつつ結局やらないというパターンが多いのですが、半強制的に触る時間を設ける取り組みのおかげで、自動テストの良さを、皆が感じることができたと思います。

また、途中から運良くMagicPodに慣れているメンバーがジョインしてくれて、MagicPodのさまざまな活用方法を見せてくれたことも、皆の興味を引く大きな要因だったと思います。

現在の状況

MagicPodはアカウントを発行し放題なので、開発本部QAメンバーだけでなくいろいろなチームに宣伝しており、TIPSTAR・家族アルバム みてね・minimo・Fansta・MIXI M、あとはベッティングサービスなどで、大なり小なり自動化が運用されています。

テストケースの数は全体で大体300ほどなので、まだまだではありますが、今後はより一層推進し、自動テストのカバレッジが増えていけばいいなと思っております。

また、QAチームだけではできることに限界があるというのも見えてきました。なので、サーバーエンジニア、各種エンジニアの方を巻き込むことも大事だと思っています。例えば、やはりクラウドで動かせないと効率的なテスト自動化が進まないと体感した際に、開発環境の認証の突破方法を提案してもらうなど、エンジニアを巻き込むことで解決できた課題も多くありました。

自動化の魅力

ここまでが自動化を始めるまでの道のりになりますが、最後に魅力に感じている部分を少し喋って終わりにしようかなと思います。

・資産になる(負債にもなりますが・・・)
・締切の都合でテストを諦めなくても良くなる(ときもある)
・楽しい

この3つは、数多く受けたウェビナーの中で話されていたことの中で、特に私が心に残っている3つになります。まず、一つ目は資産になるということですね。
資産になるという言葉があったからこそ、自動化を進めるモチベーションになりました。

手動テストは、どうしてもオペレーションの側面があるので、やってその後残るものは少ないと思っています。一方で自動テストは、一度作ってしまえば、その後は低コストで品質を何度でも担保することができるというメリットがあって、まさしく資産運用の資産というイメージとぴったりというか。

私は趣味で株をやっており、きちんとやれば、何もしなくても毎年幾ばくかのお金が入ってくるのですが、その感覚と少し近しいところがあって、「自動テスト=資産」という考えは私の中でしっくりきました。あとは、「きちんとやらないと負債になる」というところも似ていると思います。

二つ目に、スケジュールの都合でテストを諦めなくても良い、ということです。
テストをやっていると締め切りまで時間がなくて、回帰テストがおざなりになりがちなところがあると思います。
でも自動テストを組んであれば、回帰テストをやりたい分だけできるというのも自動テストの魅力かなと思います。

そして三つ目に、単純に楽しいということです。
あくまで個人的にですが、回帰テストはちょっと集中力が落ちちゃうタイプで。でも自動テストを作っている間はすごくクリエイティブで楽しいので、時間を忘れてやれてしまうところに、魅力を感じております。

おわりに

聞いていただいた通り、我々のテスト自動化は、まだまだです。だから成果が出ているのか、費用対効果が出ているかと聞かれても、力強く「はい出ています」とはまだ言えないのですが、自動化の種を蒔くことができた実感はあります。だから、これから多少時間をかけて育てていけば、その自動化の種が成果となるのではないかという手応えは感じ始めております。

MagicPodを通して、テスト自動化はすごくいいものだということが分かってきたので、今後は自信を持って、自動化に対して投資ができるのではないかと思っております。

今後は、もしかすると他のツールも試しながら、より良い自動テストをやっていけたらいいなと思っております。
以上となります。ご清聴ありがとうございました

株式会社ミクシィ
https://mixi.co.jp/

※この後行われた、株式会社ミクシィの中尾様、市川様、村田様、AIQVE ONE株式会社の花房による登壇の模様は、後日アップいたします。