最終更新日: 2024年2月19日

「当然、備えておくべき品質」「備わっていると、より嬉しい品質」など、一口に品質といっても様々な種類があります。「魅力的品質」やその対となる「当たり前品質」は、いずれも特徴別にまとめた品質の種類です。品質の種類を把握して品質の追求や改善に取り組むことで、その効果を最大化できるでしょう。

この記事では、ゲームにおける魅力的品質とは何かや、その対となる当たり前品質との違いについて解説しています。その上で、魅力的品質を高めたいときに注意すべきポイントを解説しますので、参考になれば幸いです。

魅力的品質とは

魅力的品質とは、高まることでユーザーの満足につながる一方、不十分でもユーザーが不満に思わない品質のことです。ゲームにおいて、魅力的品質は付加価値となります。

ゲームに魅力的品質が備わっていれば、ユーザーにより「面白い」「楽しい」と感じてもらうことができます。反対にゲームの魅力的品質が不十分でも、基本的にユーザーが不満を感じることはありません。

魅力的品質の具体例

ゲームにおける魅力的品質の例として挙げられるのは、キャラクターや背景の美しいグラフィック、かっこいいBGM、高い操作性などです。またネームバリューのあるプロデューサー・声優・作家が関わっていれば、それだけで魅力的品質が高まります。

美しいグラフィックがなかったとしても、それがすぐにユーザーの不満につながることはありません。けれど、こういった品質が高まることによって、ゲームをプレイするユーザーの満足度を向上させられるのです。

魅力的品質と対となる当たり前品質とは

当たり前品質は魅力的品質と対になる品質の概念で、当たり前品質について理解することで魅力的品質の理解も深まります。

当たり前品質とは文字通り「あって当たり前」の品質です。ゲームにおいて当たり前品質が満たされても、プレイするユーザーは文字通り「当たり前」としか感じません。反対に当たり前品質が満たされないとゲームをプレイするユーザーがストレスを感じ、不満を招くことになります。

当たり前品質の例とは、ゲームが操作した通りスムーズに動作すること、不具合・バグでプレイが妨げられないことなどです。操作性が悪くキャラクターが思うように動かなかったり、バグでプレイが妨げられたりすれば不満につながるのは言うまでもありません。

魅力的品質と当たり前品質の違い

魅力的品質と当たり前品質

魅力的品質と当たり前品質は、上記のような図をみると違いがわかりやすいでしょう。ゲームをユーザーに楽しんでもらうためには、魅力的品質・当たり前品質の両方を高める必要があるのは言うまでもありません。

その上で魅力的品質は、顧客満足度を高めるのに必要な要素です。一方、当たり前品質を疎かにしてしまうと、ユーザーの不満を招くことになります。それぞれの品質についての特徴を理解し、どちらも高める必要があるわけです。

【参考】その他の品質要素と「狩野モデル」

魅力的品質と当たり前品質は、東京理科大学の狩野名誉教授が1980年代に提唱した「狩野モデル」の一部です。狩野モデルでは魅力的品質と当たり前品質を含め、品質を以下の5種類に分類して定義しています。

・当たり前品質
充足されても当たり前としか受け取られない反面、不充足であるとユーザーの不満につながる品質

・魅力的品質
充足されるとユーザーの満足度を高められる反面、仮に不充足でもユーザーの不満にはつながらない品質

・一元的品質
充足されるとユーザーの満足度を高められるが、不充足であると不満につながる品質
(例)
ゲームのUI(管理画面)が使いやすければ満足につながるが、分かりにくいと不満につながる

・無関心品質
充足されても不充足でもユーザーの満足度に影響しない品質
(例)
ユーザーにとって興味のないグラフィックやBGM

・逆品質
充足されるとかえってユーザーの満足度を下げ、ない方がユーザーの満足につながる品質
(例)
ゲームに表示される広告

狩野モデルは、ゲームの品質について検討する上でも参考になる考え方と言えます。

魅力的品質を高めたいときに注意するべきポイント


魅力的品質を高めるための対応を続けても、期待するような効果をだせなかったり逆効果になったりすることもあります。この項では魅力的品質を高めるにあたり、注意すべきポイントについてみていきましょう。

何が「魅力的」か「当たり前」かは、ユーザーの価値観による

何をもって「当たり前」「魅力的」とするかは、ユーザーの価値観によって異なる場合があります。たとえば魅力的品質の例として、上記では美しいグラフィックをあげました。

けれどグラフィックにこだわるユーザーの場合、グラフィックが一定以上美しくないと不満に感じる可能性があります。ゲームの品質について検討する際は、対象となるユーザー像も明確にしておく必要があるのです。

品質による考え方は時代によっても変わる

どんなことを魅力的・当たり前と感じるかは時代によっても変わります。今は魅力的品質と考えられる内容でも、時代がかわれば価値観が変わるので魅力的と感じられなくなるかもしれません。魅力的品質を向上させるためには、その時代に合わせてユーザーがどのような品質を求めているか知る必要があるのです。

「魅力的品質」と「当たり前品質」はかち合うことがある

魅力的品質と当たり前品質はシーンによっては、かち合ってしまうことがある点も注意しなくてはいけません。たとえばグラフィックにこだわることで魅力的品質は高まるかもしれませんが、ゲームの処理が重くなる可能性があります。その結果、基本的な操作に支障が生じれば「当たり前品質を満たせていない」ことになってしまうのです。

納期やコストに関する配慮も必要

時間やコストをかければ、魅力的品質はその分だけ高められる可能性はあります。けれど、その分だけ納期が延びたりコストが増えたりすれば、ユーザーに届けられる時期も後ろ倒しになりますし価格も高くなります。

その結果、ユーザーの満足につながらなくなってしまう可能性もでてくるのです。魅力的品質を高める際は、納期やコストに関する配慮も求められます。

魅力的品質を保証することはできる?

当たり前品質に関しては、通常のソフトウェアテストで保証することができます。一方で魅力的品質については、ユーザーの主観に関わる内容となるため、一般的なソフトウェアテストでは保証できません。

AIQVE ONEでは魅力的品質を向上させるのに役立つ、「FunQA」(ユーザーテスト)というユーザー体験の品質保証サービスを用意しています。FunQAは、50,000人以上のモニターとゲーマーに楽しんでもらいながら行う新しいQAです。FunQAではユーザー調査によって課題・改善点を洗い出し、レポートにまとめてお客様に提出いたします。

サービスの詳細やサマリーレポート例については、以下のページにてご覧いただけます。
https://www.aiqveone.co.jp/service/funqa/

まとめ

「魅力的品質」とは、不十分でもユーザーが不満を感じないが、高めることでユーザーの満足につながる種類の品質です。また、その対となる「当たり前品質」は不十分であるとユーザーの不満につながる一方、十分でも当たり前としか感じられない品質を指します。

魅力的品質と当たり前品質はこのように特徴が異なりますが、ユーザーの満足度を高めるためにはその両方を充足させることが必要です。

その上で、何を魅力的と感じるかはユーザーの価値観や時代によっても変わってきます。ユーザーの満足度を向上させるためには、高めるべき魅力的品質を見定めてから、品質の向上をはかることが求められるのです。