最終更新日: 2023年9月19日

ソフトウェアテストにかかわる資格に、JSTQB認定テスト技術者資格というものがあります。JSTQB認定テスト技術者資格は、ソフトウェアテストの知識・スキルを証明する国際資格です。この記事ではJSTQB認定テスト技術者資格の概要や取得するメリット、学習方法など把握しておきたい知識をまとめて解説しています。

JSTQBとは

JSTQBとは「Japan Software Testing Qualifications Board」の略称で、日本の「ソフトウェアテスト技術者資格」を運営する団体です。なおソフトウェアテスト技術者資格は世界で通用する国際資格であり、JSTQBを含め各国の運営団体は、国際的な資格認定団体「ISTQB」(International Software Testing Qualifications Board)に加盟しています。

JSTQB認定テスト技術者資格とは

私たちの生活にとって、今やソフトウェアは欠かせません。スマートフォンやPCはもちろんのこと、自動車や家電製品、社会インフラ、企業システムにまでソフトウェアが使われています。

そんな中で、ソフトウェアの品質や信頼性、安全性を確保するための重要な技術として、ソフトウェアテストがあります。JSTQB認定テスト技術者資格は、ソフトウェアテストについての技術を認定する資格で、ソフトウェア技術者がテスト技術を向上させるきっかけとして認定制度が開始されました。JSTQBのテスト技術者資格は、ISTQB(International Software Testing Qualifications Board)を通じて、アメリカやイギリス、ドイツなどのISTQB連携のテスト技術者資格と相互認証を行っています。

JSTQB認定テスト技術者資格の2つのレベル

JSTQB認定テスト技術者資格

JSTQB認定テスト技術者資格には、「Foundation Level(FL)」と「Advanced Level(AL)」という2つのレベルに分類されます。(最上位の資格として「Expert Level」もありますが、日本ではまだリリースされていません。)

ここでは、これら2つのレベルの受験資格と合格率を紹介します。

Foundation Level(FL)

「Foundation=基礎」とあるとおり、ソフトウェアテストの基礎的な知識が網羅的に問われるレベルです。難易度は高くなく、合格率は過半数を超えることが多いようです。

受験資格なし
合格率PBT試験CBT試験
第30回FL試験(2021/2/13):65.3%
第31回FL試験(2021/8/21):69.0%
第32回FL試験(2022/2/12):51.7%
2021年度:70.52%
2022年度:73.86%

Advanced Level(AL)

Advanced Levelはさらに「テストマネージャ」「テストアナリスト」「テクニカルテストアナリスト」の3つに分類され、Foundation Levelで問われるソフトウェアテストの基礎知識を踏まえて、それぞれの専門領域の専門知識が求められます。

テストマネージャとは、ソフトウェアテストの計画・提案・マネジメントを行う役割、テストアナリストはテストケースの選択や実施に関する分析を行う役割を指します。一方、テクニカルテストアナリストの試験については、まだ日本では展開されていません。いずれもFoundation Levelと比べ試験難易度が高く、合格率も低くなっています。

テストマネージャ・テストアナリストの受験資格と合格率は、それぞれ以下の通りです。

Advanced Level<テストマネージャ>(ALTM)

受験資格JSTQB認定テスト技術者資格 Foundation Levelを合格していること
テストマネージャとして3年以上の業務経験があること
※業務経歴申請書の提出が必要
合格率PBT試験CBT試験
第8回ALTM試験(2018/8/25):26.8%
第9回ALTM試験(2019/8/24):16.12%
第11回ALTM試験(2021/8/21):33.44%
2022年度:34.07%
2023年度:25.00%

Advanced Level<テストアナリスト>(ALTA)

受験資格JSTQB認定テスト技術者資格 Foundation Levelを合格していること
テストアナリストとして3年以上の業務経験があること
※業務経歴申請書の提出は不要
合格率PBT試験CBT試験
第5回ALTM試験(2020/2/08):20.8%
第6回ALTA試験(2021/2/13) :13.5%
第7回ALTA試験(2022/2/12):41.6%
2023年度:25.86%

JSTQB認定テスト技術者資格の試験概要

ビジネスマン

JSTQBは2022年10月よりCBT(コンピュータ・ベースト・テスティング)による認定試験を開始し、日本全国のテストセンターで希望の日程での受験が可能となりました。これにより、従来実施していた一般募集の試験は停止されていましたが、2023年7月5日付のプレスリリースにて、会社単位での試験実施や、トレーニングコースと合わせた試験実施などのニーズを受け、認定試験の運営パートナーである一般財団法人日本科学技術連盟(以下、日科技連)によるニーズに対応したPBT(ペーパー・ベースト・テスティング)を開始することが発表されました。

プレスリリースURL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000024.000054604.html

各試験の概要は以下のとおりです。

CBT(コンピュータ・ベースト・テスティング)

対応試験Advanced Level テストマネージャ試験(CTAL-TM)
Foundation Level試験(CTFL)
試験実施日予約可能日であればいつでも受験可能
申込期間いつでも申込可能
受験料22,000円(税込)
総試験時間75分 (NDA* 5分 + 試験 60分 + アンケート 10分)
詳細情報https://www.pearsonvue.co.jp/Clients/JSTQB.aspx

PBT(ペーパー・ベースト・テスティング)

対応試験Foundation Level試験(CTFL)
試験実施日 <2023年度の開催日程>
 第1回:2023年8月5日(土)10:30~11:30、13:30~14:30    
 第2回:2023年10月21日(土)10:30~11:30    
 第3回:2023年12月16日(土)10:30~11:30、13:30~14:30    
 第4回:2024年3月16日(土)10:30~11:30
試験会場東京(日科技連が指定する会場)
申込期間<2023年度第3回試験の申込期間>
2023年9月8日(金)15:00 ~ 11月6日(月)15:00
受験料22,000円(税込)
総試験時間60分
詳細情報https://www.juse.or.jp/sqip/qualification/jstqb/foundation.html

JSTQBパートナープログラム認定企業向けのPBT(ペーパー・ベースト・テスティング)

JSTQBパートナープログラムに参加している企業向けのサービスです。

試験実施日各企業のご要望に応じて実施
試験会場各企業のご希望の会場で実施
団体割引あり

Foundation Levelトレーニングコース(教育)+PBT

トレーニングコースを受講後にPBTが受けられるサービスです。

試験実施日各企業のご要望に応じて実施
試験会場各企業のご希望の会場で実施
トレーニングコースJSTQB認定の専用教材(3日間コース)
団体割引あり
詳細情報https://www.juse.or.jp/src/seminar/detail/99/28070?program2307

JSTQB認定テスト技術者資格を取得するメリット

それでは、JSTQB認定テスト技術者資格を取得することで、どんなメリットが考えられるでしょうか。

まずソフトウェアテストに関する知識やスキルを、体系的に学べる点が挙げられます。独学でソフトウェアテストについて学ぼうと思っても、何をどう勉強すればよいかわからないでしょう。そこで資格取得を目標に勉強をすることで、ソフトウェアテストについて体系的かつ効率的に学習できるわけです。JSTQBはテスト活動におけるスタンダードになりますので、何か困ったときの拠り所になります。また、社内外でのコミュニケーションの際に、テスト業界の共通言語を使用することで意思疎通がスムーズになるというメリットもあります。テスト活動に従事する方はぜひ勉強し、取得しておきたい資格です。

さらに、これらの知識を持っていれば、一定以上の知識・スキルを持っていることの証明になります。特にAdvanced Levelの資格を保有していれば、高いスキルを持つエンジニアであることの証明になるでしょう。就職・転職の際に有利となる上に、クライアントからの信用も得やすくなります 。

JSTQB認定テスト技術者資格の勉強法

JSTQB認定テスト技術者資格を取得するには、どのように勉強すればよいでしょうか。ここでは主な勉強方法を紹介します。

JSTQB公式のシラバスを読む

JSTQBの公式サイト(http://jstqb.jp/syllabus.html)から、JSTQB認定テスト技術者資格の取得に必要な学習事項や知識がまとめられた「シラバス」をダウンロードすることができます。これを読み込むことで、資格取得のための勉強になります。

ただしあくまで学習事項が中心となる資料であることから、実際に試験で問題を解くためには、後述する参考書等の勉強を組み合わせた方がよいでしょう。なお上記公式サイトには、シラバスの他、サンプル問題や用語集もあり、試験勉強に役立ちます。

市販の参考書を活用する

JSTQB認定テスト技術者資格に合格するためには、市販の参考書での学習が推奨されます。代表的な市販の参考書として、JSTQB公認書籍でもある「ソフトウェアテスト教科書 JSTQB Foundation 第4版 シラバス2018対応」があげられます。本書はAmazon等のネットストアでも購入できるので、興味があれば探してみてください。

なお日本では上記参考書も含め、Foundation Level向けはありますが、Advanced Level用の参考書はありません。

学習用のウェブサイトやウェブアプリを活用する

インターネット上にはJSTQB認定テスト技術者資格の学習が可能なウェブサイトやウェブアプリがあります。そういったものを活用して学習をすすめるのも1つの手です。たとえば、スマートフォンアプリ「テス友」では、Foundation Level に限られますが400題のオリジナル模擬試験問題が掲載されています。

また、Advanced Levelにおいては、公式サイトにて過去問解説の動画や資料が公開されていますので、参考にされることをおすすめいたします。

対策セミナーに参加する

JSTQB公認のJSTQB認定テスト技術者資格試験対策セミナーなどがあります。こういったセミナーを活用して学習を進めるのも1つの方法です。

まとめ

JSTQB認定テスト技術者資格があれば、ソフトウェアテストの技術やスキルがあることの国際的な証明となります。日本では基礎レベルの「Foundation Level」の他、より専門的な知識が問われる「Advanced Level」の資格試験が行われています。

この資格取得のための勉強をすることによって、業務としてソフトウェアテストを行うのに必要な知識を体系的に学ぶことができる上に、外部にはその技術・スキルを信頼してもらえるようになり、転職の際等に有利です。